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東京高等裁判所 昭和31年(行ナ)27号 判決 1959年10月13日

原告 相模製粉株式会社

被告 特許庁長官

主文

特許庁が昭和二十九年抗告審判第五七四号事件について昭和三十一年四月二十七日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一請求の趣旨及び原因

原告訴訟代理人は、主文通りの判決を求め、請求の原因として次のとおり主張した。

一、原告は、上部中央に菱形輪廓内に「S」「T」の欧文字を重ね合わせてモノグラフ図柄に表わし、この左側に「ROLLER」の欧文字を、右側に「MILLS」の欧文字を、ローマン体で夫々左横書し、「ROLLER」の欧文字は左端「R」の欧文字より中央に向つて順次に小さく、又「MILLS」の欧文字は左端「M」の欧文字より右端に向つて順次大きく、全体として下辺が弧状をなすよう表わし、中央に麦の穂を俗にいう抱き麦状に表わし、麦の下部交叉部を蝶結状のリボンで結合し、その内方に「稔」の文字を書し、麦の図形の下方に「SAGAMI FLOUR MILLING CO. LTD」の欧文字をゴシツク体で下弦を弧状にして左横書し、下方に境界を現わす横線を描き、その下方に「相模製粉株式会社」の文字と「みのり」の文字及び「22KG」の数字文字記号を三段に横書して成り、地色を白抜きとし、「稔」の文字及び「みのり」の文字並びに結びリボンの輪廊は焦茶色、麦の茎、葉、穂を朽葉色、その他の文字、記号、数字及び図柄を藍色と着色限定した商標につき、第四十七類穀物及び穀粉を指定商品として、昭和二十八年八月三十一日に登録出願をし、該出願は昭和二十八年商標登録願第二二、七七七号として審理された結果、昭和二十九年二月二十二日附で、本願商標は登録第二五三、四二二号の商標と類似であつて、その指定商品も同一又は類似であるから、商標法第二条第一項第九号の規定によつて、登録できないものと認める、との理由で、拒絶査定があつた。そこで、原告は、同年三月二十五日、特許庁に対して抗告審判を請求し、同年抗告審判第五七四号として係属したが、特許庁は、昭和三十一年四月二十七日に至つて、拒絶査定の理由として挙げたところの当否に言及することなく、これとは別の登録商標第四五八、二六五号を引いたうえ、本願商標は、その「稔」の漢字及び「みのり」の平仮名文字の部分より「みのり」(稔)印の称呼及び観念が生ずるから、「みのり」印の文字が商標の要部を構成していることが明らかな上記引例の登録商標とは、共に「みのり」印の称呼及び観念において共通し、両商標は取引上誤認混淆を生ぜしめるものであり、かつ両者の指定商品は互に牴触するものであること明らかであるから、本願商標は商標法第二条第一項第九号に該当し、その登録は拒否すべきものと認める、との理由によつて、右抗告審判の請求は成り立たない、との審決をし、その審決書謄本は同年五月二十六日に原告に送達された。

二、ところで、審決が本件商標登録出願の拒絶の理由に引用した登録商標第四五八、二六五号の登録出願日は昭和二十九年三月二日であり、昭和二十八年八月三十一日にされた本件商標登録出願が拒絶査定未確定、すなわち出願と同様の状態で特許庁に係属中のことであるから、商標法第四条第一項前段の「同一又ハ類似ノ商品ニ使用スヘキ同一又ハ類似ノ商標ニ付各別ノ登録出願カ競合スルトキハ最先ノ出願者ニ限リ登録ス」との規定の適用において、本件商標の登録出願者である原告は、引用商標との関係で最先の出願者であること明らかであるので、原告の出願した本件商標の登録こそ許可さるべく、果して本件出願商標と引用登録商標との間及びその相互の指定商品の間に審決が言うがごとき類似の関係がありとするならば、右引用商標の登録は前記法条の規定に違反してされたものであり、無効とされるべきものである。

原告は、そこで、右登録商標第四五八、二六五号の権利者なる訴外日信精穀株式会社を相手取つて、昭和三十一年六月十三日に、右商標登録無効審判請求を提起し、該事件は同年審判第三一二号事件として特許庁に係属したところ、昭和三十四年四月二十五日に至り、原告の請求通り、右登録商標の登録を無効とする、旨の審決があり、これに対しては抗告審判の請求がなく、同年六月十二日に右審決は確定した。

したがつて、右登録商標の存在を理由としてされた本件抗告審判の審決はその理由なきことに帰したので、こゝにその取消を求める。

第二答弁

被告指定代理人は、原告の請求を棄却する、との判決を求め、次のとおり答弁した。

原告主張の請求原因事実中、原告主張の商標登録出願から抗告審判の審決書謄本の送達に至るまでの特許庁における手続に関する事実は争わない。

第三証拠<省略>

理由

一、原告が昭和二十八年八月三十一日にその主張のごとき構成の商標につき、その主張の登録出願をしたところ、昭和二十九年二月二十二日附で拒絶査定があつたので、同年三月二十五日に抗告審判の請求に及んだが(同年抗告審判第五七四号)、昭和三十一年四月二十七日に、本件出願商標は登録第四五八、二六五号の商標と「みのり」印の称呼及び観念を共通にし、指定商品も互に牴触するから、商標法第二条第一項第九号によりその登録はこれを拒否すべきものと認める、との理由で、右抗告審判の請求は成り立たない、との審決があり、同年五月二十六日にその審決書謄本が原告に送達されたことについては、当事者間に争がない。

二、ところで、右抗告審判の審決が、原告の商標登録出願を拒否すべきものと認めたことの理由として引用した登録第四五八、二六五号商標については、原告からこれが登録無効審判の請求がされた結果、昭和三十一年審判第三一二号として昭和三十四年四月二十五日に、該商標の登録を無効とする旨の審決がされ、右審決は、これに対する抗告審判の請求がないまゝ、確定したことは、成立に争のない甲第十二、十三号証(審決書謄本及び特許庁長官の証明書)によつて明らかであるので、本件審決の理由として登録商標はさかのぼつて存在しないことになり、右理由は消滅したものといわなくてはならない。

三、よつて本件審決はこれを取り消すべきものと認め、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟特例法第一条、民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 内田護文 多田貞治 入山実)

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